2015年1月24日土曜日

「21世紀の資本と日本国債」

 現在、トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」が日本でも人気である。2015年1月24日付SANKEI EXPRESSによると、日本語版は「1ヶ月余りで7度増刷、発行部数約13万部」と売れているという。
この本は、資本収益率が所得収益率を上回っており、格差が拡大している事を証明している。
私は格差云々よりも、国債について書かれているところを興味深く読んだ。


<アメリカ革命軍との戦争、そしてフランス革命期およびナポレオン時代のフランスとの度重なる戦争の費用調達のために、イギリス王室はひたすら借りまくった。その結果、公的債務は1770年代前半には国民所得の100パーセントにまで笛、1810年代にはおよそ200パーセントに達した(以下略)
(トマ・ピケティ『21世紀の資本』みすず書房、2014年、136頁)>


 財務省の資料によると、現在日本の債務残高対GDP比は231.9%であり、1810年代のイギリスとほぼ同じ状況である。国債暴落論が盛んにメディアで言われているが、1810年代のイギリスは国債が暴落したかと言うとそうではない。


<結局のところ、1世紀にわたる苦行の果てに国民所得に対するイギリスの公的債務比率がやっと大幅に減ったのは、イギリスの国内生産と国民所得の成長のおかげでしかなかった。
(同書 136頁)>


 消費税の増税による影響は少ないと新聞各紙は煽ったが、結局経済成長は失速。増税延期を決めた後でもまだ、国債が暴落する・延期反対と各紙伝えている。
ピケティ氏の記述に従えば、消費税増税で景気を冷やしたのは逆に、公的債務の返済の道のりを遠ざけたことになる。

 新聞各社は日本新聞協会を使い、増税を推進していながら、新聞の軽減税率を主張する。


<知識や教養を普及する役割を果たす新聞や書籍、雑誌、電子媒体に消費税の軽減税率をもとめています>


 この言行不一致は不道徳であり、二枚舌には驚かされる。
国債暴落論などという ”誤った” 知識や教養を普及する役割を果たす新聞は、国民の利益になっているのであろうか?
 
 確かに、どの新聞も株式会社である以上は利益を増やすのは当然の事である。
だが、利益を増やすために事実を曲げてまで扇動的な記事を量産するのは、腐ったチキンナゲットを販売することと何か変わりがあるのだろうか?

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